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再発見!梅若伝説と木母寺  墨田区のトータル情報サイト『アベニュー』
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第15回 梅若伝説と木母寺
東京都墨田区堤通2丁目

 隅田川にまつわる伝承の一つはかの有名な「在原業平朝臣<ありわらのなりひらあそん>で、才気溢れる稀代の美男子として語り継がれ、業平のロマンスは「伊勢物語」にも記されています。
「名にしおはゞ いざこと問はむ都鳥 わが思う人はありや無しやと」の名句は隅田川と都鳥とを知らしめた東国文学の最初であり、隅田川文学の基になっています。
 業平の没年は880年で1,128年も前になります。

梅若丸伝説
 そして、もう一つは、梅若丸伝説です。
 京の都から、拐かされて連れ回され、衰弱して倒れた12歳の子ども梅若丸と、拐かされた梅若丸を捜し尋ねて狂女となった、母、花御前の悲しくも切ないお話てす。
 12歳の梅若丸がいまわの際に「たづね来て とはゞこたへよ都鳥 すみだの河原の露ときへぬと」母が、自分を探して尋ねて来たら、隅田川の辺で息絶えました…と教えて欲しいと詠い、梅若丸を看取ったすみだの人々によって塚が築かれ、印に柳の木が植えられました。

梅 若 忌
 命日の3月15日(旧暦、現在は4月15日)は梅若忌として法要が行われ現在も続けられています。
 この4月の梅若忌は晴天に恵まれ、境内ではすみだ郷土文化資料館の専門員、田中禎昭さんの「梅若伝説と幻の町・隅田宿」の講演、墨田区謡曲連盟による謡曲「隅田川」の奉謡、講談師田辺一鶴氏による創作中の講談「梅若伝説」のお話があり、150人の参加者は、梅若丸母子の切ない想いを偲び、往時の隅田宿へのロマンを駆り立てられました。
 この母子の情愛溢れる悲しい物語は、能楽、浄瑠璃、歌舞伎、謡曲、絵巻物、絵草紙等で「隅田川」として、多くの紅涙を絞る人気の演目として語り、演じ続けられています。梅若丸が亡くなったのは、今から1032年前の事とされています。梅若丸が辿り着いたとされる場所は現在の都立東白鬚公園付近では?と推測されており、中世の時代のこの地域は隅田宿と呼ばれ、都人の往来で賑わう幹線道路(鎌倉街道)で、むしろ、現在よりも人通りの多い、賑やかな所だった様です。
 行き倒れの子どもを看病して看取り、塚を立てて、法要を続けた、すみだの人の優しさのルーツ、DNAはここに厳然とあった事が証明されました。


梅柳山 隅田院 木母寺
 梅若丸伝説は室町時代の文献の多くに記され、この柳を植えた塚が、梅若寺として、地域の信仰の拠り所とされていましたが、1590年、徳川家康が参拝、山号を「梅柳山」と制定。1607年に木母寺に改号、天台宗 梅柳山 隅田院 木母寺となりました。(現在、波母山繁信<はもやまはんしん>住職)
 明治時代に入り、廃仏毀釈の制定により、1868年、木母寺は廃絶、梅若塚は梅若神社となりますが、1888年再興。時代の波と震災・戦災をくぐり抜け、歴史を語る寺院として、現在があります。
 1945年4月13日の未明の空襲で本堂が炎上、梅若堂は目前で延焼を免れましたがお堂には生々しい弾片の跡がアチコチに。1950年に仮本堂と庫裏が再建され、徐々に本格的な復興計画が進み境内地の緑化事業が軌道に乗った10数年後に寝耳に水の都市再開発事業による防災拠点都市建設(防災団地)の為に、当該地にある木母寺の移転を余儀なくされ、現在地に移転、梅若塚は墨堤通りの榎本武揚像の奥の一隅に「梅若塚跡」として、残されています。
 木母寺の境内には焼失を免れた梅若堂が強固なガラスの囲いに覆われて在ります(この地域は防災拠点なので、木造建築物は不許可で、苦肉の策として、周囲を強化ガラス張りにしてあります)。このお堂の移転は1976年3月の下旬に墨堤通りの片側車線を封鎖して北上して現在地に安置。1989年(平成元年)に建立100年を迎え、震災、戦災の歴史を語る証言者として、これからも、町を見守ってくれる事でしょう。
 木母寺境内には都内で一番大きい「天下乃糸平(明治期の糸問屋、相場師)」の石碑、ユニークな形の「三遊塚」を始め、数々の由緒ある石碑があります。


梅若塚保存会
 1976年に墨田地域の方達によって、由緒ある木母寺を地域で守り、隅田川の旧跡として大切に保存して行くための保存会が、初代墨田区長の勝田菊蔵氏を発起人代表、当時区長の山崎榮次郎氏を顧問として地域の町会長ら32名により結成、現会長松野弘子さんに受け継がれています。
 能の名作「隅田川」がフランス政府の要請で吉田 進氏により、能オペラとして上演され、フランス各地の観客が母子の情愛に涙を流して感動、大評判になり、それを受けて、日仏友好150年に当たる今年4月に日本文化会館で上演され、2010年には横浜公演の企画もあります。「隅田川」「梅若伝説」と言えば、墨田区!! 是非、トリフォニーホール公演を実現したいですね。

 開館10周年を記念特別展として、すみだ郷土文化資料館では2008年11月15日(土)〜2009年1月16日(金)の2ヶ月「隅田川文化の誕生〜梅若伝説と幻の町・隅田宿(仮称)〜」の特別展を開催しますのでお楽しみに。


お車でのお越しは水神大橋手前の側道を左折、徒歩の場合は墨堤通りの隅田川神社の鳥居をくぐり、野球場の横を北へ進み、通りに出る手前(まといを目印に)を右に曲がった左側です。





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