
音楽都市宣言
1988年3月に墨田区は「音楽都市構想」を発表しました。音楽都市構想のきっかけは、1985年2月に国技館が台東区蔵前から36年振りに相撲の町両国に戻って来る落成、祝賀のイベントとして、「墨田区民の歓迎を形にするために…」と、今も第九を歌う会事務局長の石井貞光さん、指揮者の石丸 寛さんの「ベートーベンの第九を区民5,000人による大合唱で祝おう」との壮大な計画に当時の山崎榮次郎区長の賛同を得て実現。
楽譜も読めない、クラシックなんて聞いたことも無い幼児から84歳までの墨田区民5,527人が心を一つにして「5,000人の第九」大成功に導いた事でした。子どもも大人も、お相撲さんも、芸者さんも、おじさん、おばさんみんながも喜々として参加した「5,000人の第九」は「すみだ、下町パワー」の心意気を知らせるビッグニュースとして全国を駆け回りました。
この、墨田区一丸となって取り組んだ「5,000人の第九」への熱い思いを継続して行きたいとの盛り上がり、音楽を通して得たエネルギーをすみだのまちづくりに生かしたいとの思いから、音楽都市構想が具体的に動き出しました。
すみだトリフォニーホール
1981年、墨田区長期総合計画で「大文化会館建設構想」が計画され、1986年に「錦糸町駅北口地区市街地再開発準備組合」が発足して、錦糸町駅前の再開発事業が具体的に動き出し、墨田区ではその頃、各自治体で競うように作られていた多目的ホールではなく、音楽専門ホールの建設を決定。
1993年に錦糸町駅北口再開発工事が着工、4年の歳月を経て、アルカタワーズ錦糸町として、オフィス棟、商業棟、ホテル、すみだトリフォニーホール、住宅棟が1997年10月に落成。(アベニュー1・13・25・27号参照)
すみだトリフォニーホールのこけら落としは10月26日に小澤征爾指揮、新日本フィルハーモニー交響楽団の演奏で「マーラー作曲 交響曲第3番」が華々しくすみだトリフォニーホールの前途を祝しました。すみだトリフォニーホールは音響効果抜群の屈指の音楽ホールとして高い評価をうけ、1,800席を超える大ホール、小ホールともに高い稼働率を維持し、音の良さ、会場の素晴らしさに加えて交通の至便が人気の秘密でもあります。
運営は墨田区文化振興財団が担い、ホールの運営を始め、ジャンルを越えて優れた音楽を紹介する独自企画のコンサート、地方都市オーケストラ・フェスティバルの開催、音楽都市実現のために、小中学校でのコミュニティコンサートの実施、ジュニア・オーケストラ設立(今年10月)等の事業を実施しています。
2004年には音楽専門誌のベスト・コンサート賞にも選ばれ実績を積んでいます。その他、AIG株式会社、新日本フィルとの共同企画ですみだトリフォニーホールのホール探訪やミニコンサート、音楽映画上映会など、多くの区民が参加してのイベントも区民に喜ばれています。
新日本フィルハーモニー交響楽団
1972年、小澤征爾氏のもと自主運営のオーケストラとして創立、1987年、国技館での「5,000人の第九」の演奏が縁で、日本では初めてのフランチャイズオーケストラとして、墨田区と1988年8月にフランチャイズ契約の覚書を交わし、1997年からすみだトリフォニーホールを楽団の我が家、拠点として多岐にわたる音楽活動をしています。
どこの交響楽団も100人を越す大所帯の練習会場の確保には苦労し、華やかな舞台とは裏腹に根無し草の悲哀を味わいながらの演奏活動を余儀無くされていますが、フランチャイズホールとしてトリフォニーホールを優先使用でき、事務所や楽器の収納も可能な事で活動の舞台も大きく広がったようです。ことに本番のホールで練習もできる効果はこの上もないものとされています。
フランチャイズ契約の成立後の1989年7月から墨田区民への音楽啓発のための活動を始め、区内の小・中学校の講堂や体育館で児童、地域の方のためにフルオーケストラ出演のコミュニティ・コンサートを毎年実施、音楽ファンやクラシック初体験の方を楽しませてくれています。その他にも新日本フィルのメンバーによるミニコンサートや小中学生への音楽指導、ふれあいコンサートなど、すみだの交響楽団として、活発に活動をしています。我が町に「オーケストラがある」のはすみだの誇りでもあります。覚書の中には、お互いに経済的に依存しないの一項があり、新日本フィルは決して、墨田区のお抱えの交響楽団では無く、家賃もホール使用料も払う対等の立場での交響楽団です。
新日本フィルのトリフォニーホールでの公演は定期演奏会が24回、名曲コンサート夏休みコンサート、親子コンサート、年末の第九コンサート、ニューイヤーコンサートなど30公演以上あります。他ホールでの客演や地方、海外公演、レコーディングなどもあり大活躍です。

音楽都市すみだには、新日本フィルの他にも地域の音楽団体、学内音楽サークルなども、他区とは比べものにならないほど、数においても、活動においても活発です。その、ほんの一部をご紹介します。
◎墨田区合唱連盟
「5,000人の第九」を契機に区内には合唱団が次々と誕生、現在、合唱連盟に加入団体は30あり、毎年、秋の墨田区合唱祭は華やかに歌声を競いあっています。また、トリフォニーホールでのトリプルコンサートも5回目となり、年々観客が増えて入りきれないほどです。
各団体とも練習、研鑚を積み重ねています。
◎墨田区民オペラをつくる会
墨田の音楽都市構想を在野の立場で推進しようと、1990年に区内の音楽団体、合唱連盟、演劇集団が「墨田区アマチュア舞台芸術協会」を設立。各団体の総合力を生かすオペラ公演を企画、1991年3月に墨田区史上初の第一回オペラ公演「魔笛」上演は感動的なものとなりました。ソリストは一流のプロ、合唱団は区内合唱団から選抜、演奏は墨田区民オペラ管弦楽団、演出、大道具、衣裳、裏方は区民という墨田区民手作りのオペラは大好評を博し、以降、年に1回の公演を続けて13回、2005年には「カルメン」を上演、来年の4月には「蝶々夫人」の公演が決定しています。
◎アマチュア演奏団体も盛んです。
墨田区交響楽団、墨田区吹奏楽団、AZUMA吹奏楽団、墨田シルバーアンサンブルなど、区内には多くの音楽団体があり、アマチュアながらもコンサート会場に多くの観客を集める実力とファンを持つ活動を続けて音楽都市の裾野を広げる大きな力となっています。
区内にはトリフォニーホールの他にも曳舟文化センタ―、ユートリヤ等でもコンサートが常に行われています。
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